何度も読んでほしい日本の名作絵本vol5
「三まいのおふだ」
小澤俊夫 再話 金井田英津子 絵 くもん出版
三枚のお札は、青森県及び埼玉県川越市を中心に伝わる日本の昔話。いろいろな絵本が出版されており、テレビや人形劇などでもお馴染みのお話ですよね。今回は、くもん出版の絵本をご紹介します。このお話を読む時に味わっていただきたいポイントを3つご紹介します。迫力のお話と絵をご堪能ください。
①小澤俊夫さんによる再話小澤俊夫さんは小澤昔ばなし研究所所長で筑波大学名誉教授。グリム童話の研究から出発し、日本の昔話の研究を進めていらっしゃいます。昔話は地域や話者によって少しずつストーリーに違いがあるものです。また死など、残酷なシーンもあります。絵本によっては残酷なシーンをオブラートに包んだり、ユーモアな展開に変えてあるものもあります。しかしこの絵本では、昔話と真正面から向き合い、先人たちからのメッセージを現代に伝えたいという思いが伝わってきます。
②金井田英津子さんの迫力の絵不気味で迫力満点!夜の闇の怖さ、こぞうさんの恐怖が伝わってきます。お話の前半、山姥が「ばあさん」と呼ばれている場面では、山姥の姿ははっきりとは描かれていません。しかし「やまんば」という描写に変わったとたん、ついに正体を現した!とばかりに恐ろしい山姥の姿が露わになります。山姥が迫りくる様子にハラハラドキドキです。また表紙に描かれた和尚さんの後ろ姿。なぜ和尚さんが表紙に描かれているの?読む前は疑問でしたが読み終わってから改めて表紙を見てみると心にストンと落ちるものがあります。お子様とお話してみても面白そうです。
③神仏に対する畏敬の念迫り来る山姥!しかし三枚のお札や和尚さんがこぞうさんを助けてくれます。私たちは普段の生活で宗教的なものを意識することは少ないですが、神仏に対する畏敬の念は大切にしたいもの。子どもたちにも伝えていきたいですよね。万物に神様が宿っているという昔からの日本人の宗教観は、御先祖様や自然、物を大切にすることに繋がっていますし、神さまや仏さまが守ってくれるという思いは気持ちを安定させ、ここぞというときの強さにもなります。そういった先人が語り継いできた思いを自然に受け取ることができるのも、昔話の素晴らしさです。私たち大人も改めて読みたい絵本。ぜひお手に取ってみてください。