何度も読んでほしい日本の名作絵本vol7
「やまんばのにしき」
松谷みよ子 文 瀬川康男 絵 ポプラ社
「いないいないばあ」や「いいおかお」でお馴染みの、松谷みよ子さんと瀬川康男さんのお2人が1967年に発表した作品です。やまんばといえば「うまかたやまんば」や「食わず女房」に登場するような恐ろしいやまんばが思い浮かびますが、このお話のやまんばは私たちのイメージを覆すことでしょう。大らかな、人間味溢れる物語をぜひお楽しみください。このお話を読む時に感じていただきたいポイントを3つご紹介します。
①生き生きとした語り口このお話は全編通して語り口調で表現されています。「ちょうふくやまというたかい山があったと。」「つきみをしていたと。」というように、まるで目の前で昔話を聞いているような温かみを感じます。昔話特有のオノマトペも味わい深く、声に出して読むことでさらに生き生きと伝わってくることでしょう。
②色彩豊かで温かみのある絵月のきれいな夜、大嵐、やまんばの住処、見事な錦・・様々な場面が次々と展開していきます。瀬川康男さんの絵は温かみがあり、小さなお子様にも親しみやすいと思います。所々に動物たちが出てくるところにも昔の大らかな生活を感じていただけることでしょう。
③従来のイメージと大きく異なるやまんば「だれもかぜひとつひかねえように、まめでくらすように、おらのほうで、きをつけてるでえ」「そしてそれからというもの、むらの人たちはかぜもひかず、らくにくらしたということだ。」このお話のやまんばは、まるで神様や仏様のような存在にも感じます。やまんばや息子の『がら』の様子は仏画のようにも見えますし、村を見守る仏様のような存在なのかなと感じます。人間味溢れる優しい存在ですが、その一方で、生まれたばかりにも関わらず凄まじい力を持つがらは、村人の心持ちによっては災厄をもたらす存在のようにも感じられます。がらは黒っぽく描かれており、得体の知れないオーラに包まれています。あかざばんばの村を思う気持ちにやまんばが応えハッピーエンドを迎えましたが、もしも当初の予定通りねぎそべとだだはちがやまんばの元に行ったとしたらどうなったのかな・・と想像するのも面白いですね。
人間味溢れる豊かな物語。ぜひ読んでみてください。