何度も読んでほしい日本の名作絵本vol.9
「くわずにょうぼう」
稲田和子再話 赤羽末吉画 福音館書店
「くわずにょうぼう」は日本全国に伝わる昔話。今回は福音館書店出版のこちらの絵本をご紹介します。
稲田和子さんによる再話と赤羽末吉さんによる絵が唯一無二の世界観を作り上げており、何度も読みたくなる絵本です。うんとよくばりの男が「よっく働いて飯を食わない女房がほしいもんだ」と言ったところ、本当に飯を食わないという美しい娘がお嫁にしてほしいとやって来ます。しかしこの娘、実は人間ではなくて・・。スリリングな展開にヒヤヒヤドキドキ。この絵本の興味深いポイントを2つご紹介します。
①人間でない者との結婚この「くわずにょうぼう」のように、人間とは違った種類の存在と人間が結婚するお話は世界各地に存在するそうです。日本でも、鶴の恩返しや雪女が有名ですよね。そして「見るな」と言われた約束を破ることで離別する結末が多く見られます。こういったお話を異類婚姻譚といい、民俗学者の柳田國男や関敬吾によって研究されました。他にもいろいろなパターンの異類婚姻譚があります。読み比べてみると面白そうですね。
②菖蒲とヨモギこのお話では、菖蒲とヨモギが重要な働きをします。菖蒲とヨモギは古代の中国で邪気を祓うものとされ、菖蒲酒を飲んだりヨモギを軒先に飾る風習があったそうです。そのような習慣が平安時代に日本に伝わり、端午の節句に菖蒲湯に入りヨモギを練り込んだ草餅を食べることに繋がっていったといわれています。よく働いてご飯を食べない奥さんがほしいなんて調子のいいことを言ってる男には、一体どんな結末が待っているのでしょうか・・。5月5日の端午の節句には、ぜひ菖蒲とヨモギの由来のお話をしながらお子さまと読んでみてくださいね。