「しあわせハンス」
「しあわせハンス」グリム童話
フェリクス・ホフマン 絵 せたていじ 訳 福音館書店
「本当のしあわせ」とは何なのだろう?そう考えさせられる絵本。
今回はこの「しあわせハンス」をご紹介します。
ハンスは7年働いたお給金として金の塊をもらい、ふるさとのお母さんの元へ帰ることになりました。その帰路でいろいろな人と出会い、物々交換をしていきます。ハンスの金の塊は、一体何に代わっていくのでしょうか・・。これはグリム童話を元に、フェリクス・ホフマンさんが絵を描き、瀬田貞二さんが翻訳をしました。
まず目を引くのはなんといっても素晴らしい絵です。フェリクス・ホフマンさんは1911年にスイスで生まれたグラフィックデザイナー。ステンドグラスやフレスコ画の他、たくさんの絵本や児童書の挿絵を作成しました。この「しあわせハンス」では真っ白な背景に登場人物のみを描くことで、表情や仕草がぐっと引き立つものとなっています。また文章は、その素晴らしい絵を際立たせるかのようにページの下に一列に並んでおり、とても個性的なレイアウトになっています。このようなレイアウトにするため、本当に磨き抜かれた無駄のない文章になっているそうです。
この文を書いた瀬田貞二さんは児童文学作家・翻訳家で、「三びきのやぎのがらがらどん」や「おおかみと七ひきのこやぎ」などたくさんの絵本の翻訳や制作を手掛けた方です。瀬田さんの翻訳は原文をただ日本語に変換するのではなく、日本語を巧みに操り日本の子どもたちに親しみやすく、大人が読んでもしみじみと深みのある文章となっています。日本語の豊かさを感じるとともに、その豊かな日本語を駆使し子どもたちの為に心を込めて編み上げた瀬田さんの素晴らしい文章は、これからもずっとずっと世代を越えて読み継いでもらいたいものです。
「まったく、ぼくぐらいしあわせもんは、てんかにいないや」悪い大人たちに騙されているようにも見え大丈夫かな?と心配になりますが、ハンスはあっけらかんとこう言います。ハンスのしあわせそうな表情に比べ、大人たちの意地悪そうな表情は同じ大人として悲しくなってしまうほど。物に執着して暮らしている私たち。
君たちってしあわせなの?ハンスはそう問いかけているように感じます。
フェリクス・ホフマン 絵 せたていじ 訳 福音館書店
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