はなのすきなうし
マンロー・リーフ 作 ロバート・ローソン 絵 光吉 夏弥 訳 岩波書店
「はなのすきなうし」は、1936年にアメリカで出版され、たちまち大評判になった絵本です。これを題材としたアニメーションも発表されるなど、80年以上愛さ続けているお話。今回はこの絵本をご紹介します。
マドリードの闘牛で華々しく闘ってみたいというのが牧場の牛たちの夢。牛たちは一日中角でつつきあったり頭をぶつけ合ったりしています。けれどもフェルジナンドはそうではありません。牧場の端のコルクの木の下に座って花の匂いをかぐのが何よりも好きなのです。
お母さんは心配してフェルジナンドに聞きます。「他の子どもたちと一緒に、跳んだり跳ねたりしてあそばないの?」フェルジナンドはこう答えます。「ぼく、こうしてひとり、はなのにおいを嗅いでいる方が好きなんです」それでお母さんは安心してフェルジナンドの好きなようにさせてやります。
ある日5人の男が、マドリードの闘牛に出す牛を探しにやってきます。大きくて、足が速くて、乱暴な牛を探しているのです。他の牛たちはうーうー唸ったり暴れまわってアピールしますが、ひょんなことからフェルジナンドが選ばれてしまいます。闘牛は、闘った最後には大闘牛士にとどめをさされてしまいます。
さてフェルジナンドは一体どうなってしまうのでしょうか・・
出版された当時はスペイン内戦真っ只中で、いろいろと政治的に解釈されたそうです。作者のリーフは「フェルジナンドが花の匂いを嗅いで闘わないのは、良い趣味を持ち、また優れた個性に恵まれていてからだ」(本書解説より)と言っています。
周囲に流されず自分の生き方を自然に全うするフェルジナンドの姿は、多くの人の共感を呼びます。またそんなフェルジナンドの個性を認めて見守るお母さんの姿は、子どもに関わるすべての大人のお手本といえるのではないでしょうか。
今や60以上の言語に翻訳され、世界中でたくさんの子どもたちに愛されているお話。ぜひ一度お読みになってください。