「せかいいちおおきなうち」
レオ=レオ二 作 谷川俊太郎 訳 好学社
ほんとうの幸せとは?そんなことを改めて考えさせられる絵本。今回はこの「せかいいちおおきなうち」をご紹介します。
レオ=レオ二は1910年にオランダで生まれます。欧米を中心にアーティストとして活動していましたが、49才の時に孫のために作った「あおくんときいろちゃん」で絵本作家デビューします。みなさんご存知の「スイミー」「フレデリック」「アレクサンダとぜんまいねずみ」など、生涯で40冊近くの絵本を制作しました。水彩やコラージュ、色鉛筆など作品によって画法を使い分け、色彩豊かで温かみのある絵に引き込まれます。
レオ=レオ二の作品は、その素晴らしい絵やかわいらしい動物のキャラクターに注目が集まりがちですが、どの絵本にも強いメッセージが込められていると感じます。
本作では、「ぼく おとなに なったら、せかいいち おおきな うちが ほしいな」というちびかたつむりに対し、おとうさんは寓話を話して聞かせます。かつて世界一大きなうちを持ったかたつむりがどうなったかを。その寓話の中にレオ=レオ二のメッセージをしっかりと感じるものの、素晴らしい絵と谷川俊太郎さんの詩的で洗練された文章によって、決して押し付けがましくなく心に染み込んでいきます。
特に注目していただきたいのは、後半にある文章のない見開きのページ。なんでもない葉っぱや小石が、かたつむりの視点で実に写実的に描かれています。改めて見ると、なんて不思議で複雑な世界なのでしょう。松ぼっくりの細かな模様、しだの葉の一枚一枚、すべすべした小石たち。普段気にも止めない当たり前の光景が、驚きと感動を持って目に飛び込んで来ます。今いる世界そのものが、驚きと、感動と、幸せに満ちていることに改めて気付かされるのです。
大人の方にこそ改めて読んでいただきたい絵本。ぜひご覧になってください。