「ぐりとぐらのおきゃくさま」
「ぐりとぐらのおきゃくさま」 中川李枝子作 山脇百合子絵 福音館書店
森で雪合戦をしていたぐりとぐらは雪の上に大きな足跡を見つけました。その足跡を辿ってみることにした2匹。森を抜け、原っぱを通り、からまつの林へ向かって行くと・・。お馴染みぐりとぐらの楽しいお話。今日はこの「ぐりとぐらのおきゃくさま」をご紹介します。
作者の中川李枝子さんは北海道に生まれ、保育園に勤務の傍ら絵本の創作を始めます。また山脇百合子さんは中川さんの妹さん。「ぐりとぐら」が初めての絵本制作で、当時はフランス語専攻の大学生だったため野ネズミを描いたことがなく困ったのだそう。
そんなお2人の作品は、誰もが夢中になって読んだはず。中川さんの保育士さんとして子どもたちと過ごしてきた経験、また山脇さんの素朴で温かみのある絵はたくさんの子どもたちの共感を呼び、ぐりとぐらシリーズはなんと60年以上愛され続けています。
このお2人の作品に共通することですが、この「ぐりとぐらのおきゃくさま」も背景が白く対象物以外の描き込みが少ないのが大きな特徴。そこには幼児らしい視点が表現されています。自分の家を見てもすぐに気付かない主人公たちの感覚も、その瞬間、その物だけを見て生きている子どもたちの感覚なんだろうと思います。大人になってもその感性を忘れずに見事に表現しているのが中川さん、山脇さんの凄さなのではないでしょうか。
素敵なプレゼントをくれたおじいさん。赤い服を着ていますがサンタさんとは明言せず、含みを持たせた終わり方をしています。また裏表紙に描かれた懐中時計。おじいさんの忘れ物かな・・でも本当におじいさんはいたのだろうか・・なんて余韻を残しているところも、クリスマスの素敵な魔法のような時間を感じさせてくれます。
クリスマスの楽しさがたっぷりと詰まった素敵な絵本。ぜひお楽しみください。