英語は何歳から始めるのが効果的?赤ちゃんや幼児にはまだ早い?
「英語は何歳から始めたらいいのでしょう……?」
こんな質問を、当教室でもよくいただきます。
今では赤ちゃんの頃から英語に触れさせる、なんて親御さんも多いですが、いったいいつから英語を始めればいいのか、迷ってしまいますよね。
ですが、「早くからやらないと!」なんて焦る必要はありません。
早くても、幼稚園生の4歳、5歳くらいからで大丈夫です。
英語は早くから始めればいいというわけではなく、むしろ、赤ちゃんや幼児の頃から始めてしまうと逆効果になってしまうこともあるのです。
今回は、『英語の前にまずは母語である日本語から学んでほしい』というポイントから、英語はいつから始めるのがいいのかをお伝えしていきます!
なお、この記事では、「お子さまの母語が日本語で、外国語として英語を勉強する」という前提で話を進めていきますね。
英語の前に日本語の教育から始める
子どもが小さい頃から英語を教育しなきゃ……!と焦る方も多いですが、英語よりもまずは日本語の教育から始めていくほうが、言語の習得には効果的です。
お子さまの考える力や学習力を高いレベルまで引き上げていくためには、言語力の土台となる「日本語」からしっかり学んでいく必要があるからです。
母語の発達は、健全な人格を形づくっていくのにとても役立ちます。人格形成の基礎といっても過言ではありません。
なので、外国語よりもまずは母語を優先して、身につけていく必要があるんですね。
一般的に、母語がもっとも急激に発達するのは2歳から4歳ごろだといわれています。そして、9歳から10歳ごろまでの間で、母語による学習ができるようになってきます。
つまり、日本語で学習できる力を養うのに、10歳になるまでの時間がかかってしまうということです。母語が発達する、いちばん大切な時期ともいえますね。
この期間に、日本語に接する機会が減ったり、日本語よりも外国語に接する時間が長くなったりすると、日本語の発達が止まってしまうかもしれません。
さらにいえば、せっかくそれまで身についてきた日本語が失われてしまう可能性すらあるのです。
つまり、10歳を過ぎたくらいからが、本格的に英語を学ぶのにはいい年齢だといえます。
土台となる母語が身についてから初めて第二の言語が発達するわけですが、幼稚園は母語の発達にとてもいい場所です。
これまで親としか触れ合っていなかったお子さまが、同じ年齢の子どもたちや他の大人と接する場所だからです。初めての社会生活を体験する場所、といってもいいかもしれません。
そういった他人とのふれ合いの中で、たくさんの言葉を聞き、使うことで、日本語の能力は飛躍的に伸びていきます。
せっかくそんないい環境があるのですから、幼稚園ではぜひ日本語にたくさん触れ合って、お子さまの言語能力を伸ばしてあげたいところですね!
脳科学でも証明されている母語の大切さ
外国語よりもまずは母語が大事!ということをお伝えしてきましたが、実はこのことは脳科学でも実証されているんです。
特に母語で語りかけることや、読み聞かせをすることの重要さが検証されています。
――【引用】――
慶應義塾大学文学部心理学研究室および慶應義塾大学赤ちゃんラボの内田真理子研究員、皆川泰代教授、慶應義塾大学医学部小児科学教室の有光威志助教、高橋孝雄教授ら、中央大学、首都大学東京の研究グループは、生後 2-7 日の新生児が母親の語りかけを聞くことで前頭部1-側頭部2 の脳機能結合を強めることを見出しました。特に左脳前後の言語回路や右脳前後の声の認識に関わる回路、つまりコミュニケ―ション機能に関わる回路が強まっていました。
これまでに新生児でも音声に対して言語野の一部が活性化することは知られていましたが、言語回路の結合は確認されていませんでした。他者の声でなく、母親の声という胎児期に頻繁に聞いた音声で言語野がより強く活性化し、さらには言語回路の結合が強くなることを世界で初めて報告しました。
(「日本の研究.com」の記事より引用)
――――――――
子どもというのは、母親や父親、また慣れ親しんだ身近な人の声を聞いているときに、脳がもっとも活発に活動するといわれています。
やはり、親しみのある声だと、緊張がほぐれて脳も動きやすくなるんでしょうね!
なので、「子どもには英語でどんどん話さなきゃ……!」となる前に、まずは自分たちが使っている日本語でたくさん語りかけてあげることが、脳の動きをよくするためにも大事になってくるわけです。
日本語は美しいからこそ、まずは日本語から
「日本語は美しい」とよく聞くと思いますが、これは日本人の「他人を思いやる気持ち」を育てることに役立っているからなんです。
日本語という言語は「私は~」という「主語」を前面に押し出した言い回しになることがあまりありません。
「私は~と思う」というよりも、「~が…だ」と他のものを中心にした話し方をするので、相手にも共感されやすくなります。
たとえば、「夕焼けがきれいだな」と言ったりすれば、それを聞いている人も「夕焼けはきれいだな」と共感しやすいですよね。
一方、英語は「私は~」というように、自分を主語(「I ~」)にして話すことが多いです。
「夕焼けがきれいだな」というよりも「私は夕焼けがきれいだなと思う」と言うイメージですね。
もちろん、いつもいつも「私は~」で始めるわけではないですが、言葉の文化背景を考えると、英語は自己主張をすることが多くなります。
逆に日本語だと、自分よりも相手主体、もの主体で考えることが多くなります。
そういう意味で、相手を思いやる気持ちだったり、他人と競争しないような気持ちを育む文化が、日本語には表れているわけですね。
こういった相手を思いやる美しい文化に触れていただく意味でも、お子さまにはまずは日本語を学んでいただき、日本語のすばらしさを知ってほしいと思います!
ダブル・リミテッドになるかも?
また、早いうちから英語を学んでしまうと、いわゆる「ダブル・リミテッド」になってしまうかもしれません。
ダブル・リミテッドというのは、母語がまだしっかり身についていないうちに外国語を習った場合、どちらの言葉もうまく習得できなくなってしまうことをいいます。
ことばの力が身につく時期に母語を身につけておかないと、母語そのものも、それ以外の言葉も身につかなくなってしまうわけです。
せっかくたくさん習わせようと思っているのに、逆効果になってしまうんですね。
実際のところ、お子さまによっては、英語と日本語の単語がごちゃごちゃになってしまい、混乱してしまうということがよくあります。
せっかく英語の教育をしたいと思っているのに、英語も日本語も難しくなって、学習の意欲が低下してしまう……こんな事態は避けたいものですね。
それでも早くから英語を始めたい場合は?
ここまで、英語を早くから始めるよりも、まずは日本語をしっかり学ぶほうが大切だということをお伝えしてきました。
とはいえ、もしかするとここまで読まれたあなたは「それでも英語を早くから教えたい!」と思われているかもしれません。
そこで、おすすめしたいのが『マザー・グース』です!
『マザー・グース』は、イギリスをはじめ、英語圏で親しまれている伝統的な童謡です。
英語で歌う子守歌なので、メロディやリズムを楽しみながら、自然と英語に触れあうことができます。
しっかりと英語を学習しているだとか、英単語を覚えているといった感覚が生まれないため、日本語の学習をジャマすることがありません。
日本語を学ぶ途中であるお子さまには、もってこいの教材ともいえます。
子どもの頃によくわからない内容だとしても、慣れ親しんでおくことで、大人になってからも親しみがわき、教養として理解しやすくなりますよ♪
「どれがいいんだろう……」と迷ってしまう場合は、以下の『マザーグース』の本をおすすめします!
●いっしょにうたおう♪マザーグースのうた① (えいごのうた絵本) 葉 祥明、 鷲津 名都江
●いっしょにうたおう♪マザーグースのうた② (えいごのうた絵本) 葉 祥明、 鷲津 名都江
●いっしょにうたおう♪マザーグースのうた③ (えいごのうた絵本) 葉 祥明、 鷲津 名都江 Jリサーチ出版
●マザー・グースのうた 第1集 ばらのはなわをつくろうよ (日本語) 単行本 – 1975/11/25 谷川 俊太郎 (翻訳), 堀内 誠一 (イラスト)草思社
●マザー・グースのうた 第2集 ばらのはなわをつくろうよ (日本語) 単行本 – 1975/11/25 谷川 俊太郎 (翻訳), 堀内 誠一 (イラスト) 草思社
●マザー・グースのうた 第3集 だれがこまどりころしたの (日本語) 単行本 – 1975/12/20 谷川 俊太郎 (翻訳), 堀内 誠一 (イラスト) 草思社
まとめ
ということで今回は、英語は何歳から始めるのがいいのかという疑問についてお答えしました。
日本語が身についてくる10歳くらいまでの頃は、なるべく日本語(母語)を優先してあげるのがポイントになります。
英語は、日本語がしっかり身についてからでも遅くはありませんし、そのほうが日本語の能力アップの妨げにもなりません。
まずは日本語でしっかりお子さまと触れ合い、日本語の魅力に気づかせてあげてくださいね♪
どうしても早くから英語をやりたいという場合は、上記で紹介した『マザーグース』も活用してみてください!